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2017年8月9日水曜日

青春純愛小説

このところ、純愛小説を読み返している。

まずは「野菊の墓」、何度読んでも涙してしまいます。

 船で河から市川へ出るつもりだから、十七日の朝、小雨が降るのに、一切の
持ち物をカバンひとつにつめ込み民子とお増に送られて矢切りの渡しへ降りた。
村の者の荷船に便乗する訣でもう船は来て居る。
僕は民さんそれじゃ・・・・と言うつもりでも喉が詰まって声が出ない。
民子は僕に包みを渡してからは、自分の手のやりばに困って胸を撫でたり
襟を撫でたりして、下ばかり向いている。眼にもつ涙をお増に見られまい
として、体を脇へ逸らしている、民子が哀れな姿を見ては僕も
涙が抑えきれなかった。
民子は今日を別れと思ってか、髪はさっぱりとした銀杏返しに薄く化粧をしている。

 その夜の明け方に息を引き取りました・・・。それから政夫さん、
こういう訣です・・夜が明けてから、枕を直させますとき、
あれの母が見つけました、民子は左の手に紅絹の切れに包んだ
小さな物を握ってその手を胸へ乗せているのです。
それで家中の人が皆集まってそれをどうしようかと相談しましたが、可哀相な
気持ちもするけれど、見ずに置くのも気にかかる、とにかく開いてみるがよいと、
あれの父が言い出しまして、皆のいる中であけました。それが政さん、あなたの写真
とあなたのお手紙でありまして・・・・。

今日はここまで、次は「雪の記憶」を紹介します。